気候変動への取り組みとTCFDへの対応

気候変動への取り組みとTCFDへの対応

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同

当社グループは、2022年5月20日、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明しました。

ガバナンス

当社グループでは、気候変動対応、サステナブルな社会の実現を重要な経営課題と位置づけております。そこでサステナビリティ推進会議を設け、マテリアリティに関する中長期的な取り組みや方向性の議論の他、ESG課題への対応、CSRの推進及びカーボンニュートラルへの取り組み等について、全社横断的に具体的施策をもって推進することを目的に四半期に一度開催しております。

サステナビリティ推進会議は、社長を議長、経営の執行責任者を構成員とし、実施内容は取締役会に報告し、適切な指示・監督を受ける体制としております。

推進体制図
推進体制図
推進体制図

戦略:気候変動関連のリスクと機会

「気候変動による移行的変化・物理的変化に関するリスク」と「気候変動緩和策・適応策による経営改革の機会」について、TCFDの分類に沿って検討しました。

シナリオ分析は、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)を参照し、1.5℃シナリオと4℃シナリオを検討しました。シナリオ分析を行った結果、各リスクと機会への対応について、当社戦略はレジリエンスを有していることが確認できました。

リスク分析手順
リスク分析手順
シナリオ分析(GHG排出量はCO2換算)

前提条件:・2030年断面でのリスクと機会としております。
     ・気候変動影響による財務影響金額を想定しております。

リスク・機会の種類 リスク・機会の概要 1.5℃シナリオ 4℃シナリオ 大平洋金属としての対応
財務
影響度
可能性 財務
影響度
可能性
リスク 移行 政策及び規制 炭素税の導入により事業活動(製造、輸送)におけるエネルギーコストが上昇する
  1. ・プロセス電化
  2. ・再エネ利用移行
  1. ・原料乾燥・煆焼工程にマイクロ波装置を装填することにより、熱源としての石炭や化石燃料を削減
  2. ・再エネ買電による電力利用に段階的に移行させる
気候変動に伴う需給バランスの変化による化石燃料価格の上昇や、天候不順などによる不安定な供給、再生可能エネルギー賦課金の増加により、各種原材料の調達のリスクやコストが上昇する
市場と技術の移行 顧客から脱炭素要求が高まるが、自社の脱炭素の対応が不十分であれば、製品力が低下する(市場シェアの低下など)
  1. ・LCCO2評価
  1. ・脱炭素による製造に移行し、LCCO2評価して顧客要求に応えていく
EVシフトを背景としたNi需要拡大に伴う価格上昇により、ステンレス原料が他の安価な金属に切り替わる
  1. ・新規事業の創出
  1. ・長期的には新規事業の創出も視野に、事業ポートフォリオの再構築を進める
市場からの評判 サプライチェーンにおいて、ESG対応が進んだ企業への選好が起こり、企業価値の棄損や、追加対応のコストが発生する
  1. ・脱炭素へのコミットメント
  2. ・イニシアチブへの対応
  1. ・サステナビリティ課題への取組みにコミットし、推進状況を積極的に情報開示していく(TCFD開示、CDP対応等)
気候変動情報の開示要求に対して対応を怠ることにより、資本市場における価値の低下(株価下落など)が発生する
物理 急性 生産拠点やサプライチェーンが物理的な被害を受け、操業や物流機能の停止等により、利益の損失や追加コストが発生する
  1. ・原料調達先の多角化によるリスク分散
  1. ・リサイクル資源を含めた原料調達先の多角化により、調達リスクを分散化させていく
慢性 資源調達先での雨季の長期化による原料の含水率上昇など、性状変化により、製造時の追加コストが発生する
機会 資源の効率性 天然資源に比べGHG排出負荷が少なく製造効率が良いリサイクル金属資源の(金属資源の代替)利用が拡大する
  1. ・資源循環の体制構築
  1. ・リサイクル資源の回収・受入を拡大させていくことで、新たな資源循環の体制を構築していく
エネルギー源 製造プロセスの技術革新により化石燃料使用量を大幅に削減でき、エネルギーコストを削減できる。それに伴いGHG排出量が削減され、カーボンプライシングによる影響を改善できる
  1. ・プロセス電化
  2. ・再エネ利用移行
  1. ・原料乾燥・煆焼工程にマイクロ波装置を装填することにより、熱源としての石炭や化石燃料を削減
  2. ・再エネ買電による電力利用に段階的に移行させる
製品とサービス 製造プロセスの技術革新により、顧客に対しGHGのサプライチェーン排出量削減に貢献でき、製品力が向上する
  1. ・営業力の強化と新規顧客拡大
  1. ・低炭素化製品の提供による顧客関係性の向上
  2. ・海外メーカーなど新規取引先の開拓
レジリエンス ESG課題への積極的な取り組みを全社的ガバナンス強化へと移行させることで、対応の柔軟性とスピードが高まる。投資家をはじめとするステークホルダーからの支持、協力の獲得、企業価値の向上や事業基盤の強化、さらなる事業拡大につながる
  1. ・ガバナンス強化
  1. ・ESG課題対応の計画と実行と管理

・1.5℃シナリオ:平均気温上昇を1.5℃に抑える努力を継続した状況。
・4℃シナリオ:対策は取らず、成り行きに任せた状況。

気候変動関連のリスク管理

当社グループでは、気候変動に係るリスクも含む全社的リスク管理に関し、リスクマネジメント委員会を設けております。リスクマネジメント委員会は、社長指名の取締役が委員長となり、執行役員及び部・室長を委員とし四半期に一度開催し、定常的なリスク管理(リスクの把握、評価、監視等)を行っております。リスクに対する対応策は、リスクの発生頻度や影響度から優先順位付けをした上で、優先対応リスク低減活動に取り組み、その進捗管理を行っております。

「気候変動関連のリスクと機会」は、年1回リスクマネジメント委員会で見直し、活動状況を年1回以上取締役会に報告し、適切な監督・指示を受けております。また、サステナビリティ重要課題に影響する事項は、サステナビリティ推進会議に報告いたします。

指標と目標(GHG排出量を更新)

当社グループは、2022年5月に発表した「PAMCO-2024」において、以下の通り目標を掲げております。

目標に向けての取り組み方針

・GHG排出量の低減(PAMCO-2024重点施策より)
2050年度のカーボンニュートラル達成に向け、明確な目標とカーボンフリーエネルギーの活用、新技術の導入等の方策を以って取り組みます。

GHG排出量(CO2換算)の実績

・Scope1・2排出量(単体)

目標と指標
目標と指標

(*1)2022年度の大幅な削減は、事業環境の急変により、戦略的に生産量を抑制したためです。

・Scope3排出量(単体)
環境省・経済産業省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(ver.2.5)」に基づき、Scope3排出量の算定を行いました。2022年度Scope3排出量の合計は260千t-CO2となり、カテゴリー別では、カテゴリー1:購入した製品・サービス(16%)、カテゴリー3:Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動(34%)カテゴリー4:輸送、配送(上流)(45%)、カテゴリー13:リース資産(下流)(4%)で全体の約99%を占めました。

サプライチェーン排出量【千t-CO2】 排出量比
%(*2)
カテゴリー 2022年度
C1 購入した製品・サービス 41 16%
C3 Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 89 34%
C4 輸送、配送(上流) 116 45%
C13 リース資産(下流) 10 4%
上記カテゴリー以外(C2,C5~C9,C12の計) 4 1%
Scope3合計(*3) 260 100%

(*2)四捨五入表示。
(*3)C10,C11,C14,C15は対象外

排出原単位の出典:
①サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.3.3)
②IDEAv2(サプライチェーン温室効果ガス排出量算定用)